ー企業と不動産証券化ー
不動産証券化は現代の不動産投資を根本から変えた金融手法です。この包括的ガイドでは、不動産証券化の基本から応用まで、プロフェッショナルな視点で詳しく解説します。
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不動産証券化の基本概念
不動産証券化とは
不動産証券化は、
複数の不動産を集めて
プールし、そこから生じるキャッシュフローを裏付けとした株券や債券などの
有価証券を発行
し、第三者の
投資家に販売
する金融取引です。言い換えると、
有価証券に化体された不動産
を投資家に売却する手法です。
「化体」とは、不動産のキャッシュフロー次第で決まる財産的価値に対する請求権を有価証券の形に変換することを意味します。このプロセスにより、流動性の低い不動産が投資家にとって魅力的な金融商品へと変わります。
不動産証券化商品は、
不動産のキャッシュフローを返済原資
とした投資証券、受益証券、優先出資証券などの形で市場に提供されます。
企業視点での証券化の意義
企業価値の向上
証券化は企業価値向上のための重要な戦略です。企業は新たな資産への投資と株主への現金還元の
トレードオフ
を常に考慮しています。
株主が自ら行う投資で得られるリターン以上
に企業が収益を生み出した場合、経営陣は価値を付加していると言えます。
資金調達の革新
証券化の起源は資金調達のイノベーションにあります。企業にとって証券化は資本コストを低減する効果的な資金調達方法です。株主資本や負債は、資産や事業が生み出すキャッシュフローに対する請求権であり、
金融の約束
です。
戦略的焦点の最適化
不動産証券化により、企業は本業に経営資源を集中させることができます。これは企業の戦略的焦点を研ぎ澄まし、コア事業の競争力強化につながります。
ダイベストメントとしての不動産証券化
企業戦略における
ダイベストメント(縮小型企業戦略)
は、資産売却や企業の一部事業・組織の売却(
スピンオフ、スピンアウト
)、あるいは企業清算を含みます。一般的に消極的な解決策と見なされがちですが、適切に実行されれば企業価値を大きく高める可能性があります。
不動産証券化も、企業バランスシートからの資産除外という意味でダイベストメントの一種と言えます。これにより企業は本業に集中しながら、不動産の価値を最大化できます。
近年の研究では、戦略的なダイベストメントがM&A以上に株主価値を高める可能性も示されています。不動産証券化はその有効な手段のひとつとして注目されています。
オンバランス不動産の特性
低い回転率
企業が保有する
「オンバランス不動産」
は投資用不動産と比較したとき、また他の企業内資産と比較したとき
回転率が非常に低い
特徴があります。
ROICの課題
オンバランス不動産は投資用不動産や金融資産と違い、それ単体が利益を生み出すわけではないため、ROIC(投下資本収益率)は一般的に高くありません。
高いマージン
一方で、オンバランス不動産のマージン(税引後営業利益率)は他の資産に比べて非常に高いという特徴があります。
資産効率性
回転率は資産の効率性を表す指標
であり、不動産証券化はこの効率性を高めるための重要な手段となります。
企業価値向上のメカニズム
不動産の証券化
企業が保有する不動産を証券化することで、バランスシートの効率化を図ります。
ROIC向上
ROIC(投下資本収益率)=総資産投資収益(税引後営業利益)÷総資産
の改善が実現します。
経済的利益創出
企業価値向上のための経済的利益=総資本×(ROIC-資本コスト「WACC」)
の公式に基づき、企業価値が向上します。
企業が不動産証券化を選択する主な理由は、①企業価値の向上、②戦略的焦点の最適化、③不動産運用事業の拡張(自社ビルの自己利用や単なる現物保有から販路を拡大)という三つの戦略的意思決定によるものです。
二重課税の回避と法的形態
通常の会社形態で不動産を保有する場合、法人税と株主配当への課税という二重課税の問題が生じます。そのため、不動産ファンドでは二重課税を回避できる特別な法的形態が選択されます。
日本における特別法人としては、任意組合、投資事業有限責任組合、匿名組合、信託、投資信託、投資法人、特定目的会社などがあります。これらの法的スキームを活用することで、投資家にとって税務上のメリットを最大化することが可能になります。
各法的形態には独自の特徴とメリット・デメリットがあり、証券化の目的や投資家層に応じて最適な形態を選択することが重要です。
不動産証券化の将来展望
ESG投資との融合
今後の不動産証券化市場では、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を取り入れた商品が増加すると予測されています。持続可能な建物や省エネ設計の物件を中心としたグリーン不動産証券化が注目されています。
テクノロジーの活用
ブロックチェーン技術やトークン化など、最新テクノロジーを活用した不動産証券化の手法が発展しています。これにより、より小口の投資が可能になり、市場の流動性と透明性が向上することが期待されています。
国際的な投資機会の拡大
日本の不動産証券化市場は、海外投資家からの注目も高まっています。グローバルな資金が日本の不動産市場に流入することで、より洗練された証券化商品の開発が進むでしょう。
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